電子承認システムを実現する3つの選択。 合議や条件分岐などを、確実に実現するには?
稟議書の電子化や、電子承認システムの導入を検討する際、担当者が最も頭を悩ませるのは、「いかにして自社の複雑な稟議規定や承認ルートをシステムに落とし込むか」ではないでしょうか。
特に、日本企業特有の「合議」や「金額別承認権限の自動変更」といった細かなルールを電子化しようとして、「複雑な稟議は電子化できなかった、紙に戻ってしまった」という失敗事例も少なくありません。
この記事では、電子承認を実現するための3つの主要な導入手段を比較し、特に「合議」や「多段階承認」「条件による自動分岐」など、複雑な承認フローを実現したい企業に役立つ情報をお伝えします。
目次
電子承認を実現するための3つの手段と向き不向き
電子承認システムを導入・構築する方法は、大きく分けて以下の3つに分類されます。実現したい承認フローの内容や難易度、予算、運用体制に合わせて、どの手段が適しているのかを見極めましょう。
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導入手段 |
概要 |
推奨するケース |
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グループウェアのアプリで自社構築 |
Microsoft 365やGoogle Workspaceなどの既存のグループウェアに搭載された機能(PowerAutomateやSharepoint、フォーム作成機能など)を利用して、申請・承認フローを自社で作成・運用する方法。 |
稟議が非常にシンプルで、かつ、自社での開発・改修リソースが潤沢にあれば推奨。 |
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特定のシステム付属の簡易フロー機能で運用 |
経理精算システム、勤怠管理システムなどに付随する簡易的な承認フロー機能で、特定の業務の承認だけをデジタル化する方法。 |
デジタル化したい業務が限定的で、3ステップまでの直線的な承認フローを実現したい場合には有効。 |
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専門ワークフローシステムを導入 |
社内稟議など申請・承認業務のシステム化に特化したSaaS/パッケージ製品を導入する方法。日本ならではの複雑な承認ルートに対応するための機能を豊富に持つ。 |
「合議」や「条件分岐」など複雑な稟議規定があったり、多段階認証など多くの承認ステップ数が必要なケース。mた、内部統制の強化を重視する場合にも推奨。 |
手段1:自社で利用中のグループウェアのアプリを利用して自社構築
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得意なこと(メリット) |
不得意なこと(限界) |
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・既存システム(グループウェア)との親和性が高い ・ユーザーインターフェースが統一されており利用が容易 ・初期導入コストを抑えやすい(既存ライセンスの範囲内で済む) |
・自社での開発工数がかかる ・法改正やセキュリティ対応を自前で行う必要がある ・人事異動に伴う編集、トラブルに伴う故障対応など、運用も全て自社にて行う必要がある。 |
手段2:経理精算システムや勤怠システムに付随する簡易な承認フロー機能で運用カバー
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得意なこと(メリット) |
不得意なこと(限界) |
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・特定の業務(経費精算、勤怠管理など)の申請・承認には最適 ・付属機能を利用するだけのため、導入や利用が手軽 |
・適用範囲が限定され、全社的な社内稟議には不向き ・直線的な承認フローの設計しかできず、「合議」「条件分岐」「多段階承認」などには対応していない場合が多い。 ・追加オプション費用がかかる場合がある。 |
手段3:専門ワークフローシステムを導入
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得意なこと(メリット) |
不得意なこと(限界) |
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・申請・承認業務に特化したシステムのため、「合議」や金額、部門に基づく条件分岐など、複雑な承認ルートに柔軟に対応できる ・申請データや操作ログを蓄積しており、内部統制の強化に役立つ。 |
・月額利用料が発生する ・シンプルな承認フローを実現するには、機能がオーバースペックとなる場合がある |
合議・条件分岐などを含む、電子承認を実現させるには、専用ワークフローシステムを推奨
電子承認システムの選定にあたり、従来の稟議規定に「合議」や「金額毎の承認権限の変更」「関係者の事前了承」細かい条件や複雑な承認規定がある場合は、迷わず専門ワークフローシステム(手段3)を強く推奨します。
その必然性を理解するために、なぜグループウェアや簡易機能(手段1、2)では日本の複雑な稟議文化を再現できないのかを明確にしておきましょう。
日本特有の複雑な稟議文化
日本の企業文化において、「稟議」は単なる事務手続きではなく、組織内の意思決定プロセスそのものです。
1. 合議:合議は単なる複数承認ではない
日本の稟議における「合議」とは、複数の部門長や関係者のうち全員の意見を汲み、全員の同意をもって初めて成立するという、「全員一致の意思決定」に近い重い意味を持ちます。
簡易な承認フロー機能の限界
簡易機能の多くは「A、B、Cのうち誰か一人が承認すれば次へ進む(並行承認/または承認)」という設定しかできません。
2. 多段階承認:稟議における事前了承
日本の稟議では、本承認ルートに乗せる前に、「関係者への情報共有・確認」や「事前了承」といったステップが発生することが多く、承認ステップが多段階になる場合が多いです。
簡易な承認フロー機能の限界
簡易機能の多くが、申請・承認の直線的で少数ステップのフローに特化しており、「回覧」「事前了承」等を組み込んだ多段階承認フローには不向きです。
3. 権限:承認ルートの条件分岐
細かな権限設定により、承認ルートが複数の条件(金額、申請部門、申請内容)によって複雑に変化するのが日本の稟議です。
簡易な承認フロー機能の限界
機能の多くは、金額や申請内容に従って、適切な承認者に自動で切り替えることができません。条件分岐ができない場合、申請者が承認者を選び直す必要があり、承認ルートの間違いや承認権限規定の遵守漏れといったリスクが残ります。

ちょっとブレイク:付箋
書類を手渡しする際に「昨日お伝えした件です」や「ちょっと急ぎでお願いします」など、声掛けや補足情報を伝えながら渡していませんか?当社の社内稟議システム「グルージェントフロー」は、申請画面に「付箋」を使って、声掛けや気配りのコメントを貼ることができます。合議や根回し同様に、日本文化ならではの気遣いや気配りを、システム上で実現できます。専門ワークフローシステムならではの機能ですね。詳細は付箋機能ページをご覧ください。
システム選定チェックリスト
どの専門ワークフローシステムを選べば良いのでしょうか?合議や条件分岐など、日本ならではの稟議文化を反映させ、電子承認を実現するために、必要なチェックポイントをまとめました。
チェックリスト
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No. |
チェック項目 |
必須度 |
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1 |
動的な承認ルート設定機能があるか(金額、部門、申請内容で承認者が自動変更できるか) |
必須 |
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2 |
「合議」(並行承認かつ全員承認必須)の設定が容易か |
必須 |
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3 |
承認ステップを3つ以上設定できるか(多段階承認フローに対応しているか) |
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4 |
電子印が押せるか |
高 |
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5 |
従来の稟議書と似たレイアウトに対応しているか |
高 |
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6 |
申請文書をダウンロードできるか |
高 |
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7 |
監査証跡(承認履歴)が改ざん不可能で、蓄積・保存されるか |
必須 |
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8 |
検索性に優れているか、過去の申請書を検索しやすいか |
必須 |
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9 |
セキュリティ基準が自社の要件を満たしているか |
必須 |
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10 |
サポート体制やマニュアルが充実しているか |
必須 |
グルージェントフロー の導入事例
社内稟議システム「グルージェントフロー」を導入し、申請・承認業務の効率化を実現された導入事例をご紹介します。
シンプルに電子化して社内不満を抑えた フェリーさんふらわあ様
株式会社フェリーさんふらわあは、1972年から長距離フェリーの運航を開始している海運会社です。関西と九州という離れた拠点のやりとりで長期化しがちだった決裁処理が課題となっており、効率化を求めて電子承認システムの導入を検討していました。
社員の年齢は40代~50代が最も多かったため、ユーザーファーストな設計でわかりやすく、既存の紙の書類と同じように使える電子決裁サービスを探していたところ、グルージェントフロー が最適であることがわかり、導入を決断。わからない点はすべてサポート(クラウドコンシェルジュ)に質問しながら作業ができたためスムーズに導入でき、すぐに紙の決裁書も使われなくなりました。
その結果、今までは1週間以上かかっていた決裁が遅くとも2、3日、早くてその日中に決裁できるようになり、申請業務の効率化に成功しました。
業務プロセスの見直しまで進んだ ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル様
ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテルは、1991年に設立されて以来、横浜・みなとみらいのシンボルとして多くの方を魅了してきた国際ホテルです。経営改革の際に G Suite(現 Google Workspace)を導入して業務全体の効率化を図りましたが、稟議・申請業務において、捺印や回覧などに時間がかかるという課題が浮き彫りとなっていました。
そこで「G Suite と連携ができる」「直感的で使いやすい」「カスタマイズやメンテナンスが簡単」という三つの観点から グルージェントフロー を導入。サポートの手厚さもあり、わずか2ヶ月でスピード導入し、今ではワークフローの効率化だけではなく、業務プロセスの簡略化にもつながっています。
電子承認システムは、日本ならではの稟議文化を踏まえて選定すれば、社内にスムーズに浸透し、利用が定着します。ぜひ、チェックリストをご活用ください。


