ケルベロス(Kerberos)認証とは?仕組みや取り入れるメリットを紹介
シングルサインオンを実現する方法の1つがケルベロス認証です。ケルベロス認証は、ユーザーの利便性が高いことや通信トラフィックが少ないことなどさまざまなメリットがあります。
本記事では、ケルベロス認証の仕組みを解説しています。また、取り入れるメリットや課題も紹介しているため、ケルベロス認証の導入を検討している方は参考にしてみてください。

目次
ケルベロス(Kerberos)認証とは
ケルベロス認証は、高いセキュリティレベルを確保するネットワーク認証技術です。この仕組みではクライアントとサーバー間で双方向の身元確認が行われ、通信内容が暗号化されることで情報セキュリティが保たれます。
特徴として、一度認証すれば追加の認証が必要なく、さまざまなサービスにアクセスできる点があり、これがユーザー利便性の向上とパスワード管理の煩わしさを軽減することにつながっています。
実際に、WindowsのActive Directoryで採用されている方式で、独自開発されたチケット方式の認証により、セキュリティ面に優れた合理的なアクセス管理環境を実現しています。
ケルベロス認証の仕組み
ケルベロス認証の仕組みは、チケットと呼ばれる電子的な認証情報を活用します。ケルベロス認証では、ユーザーが最初に認証を行うと特殊な暗号化チケットが発行され、以降はIDやパスワードを再入力することなく各種サーバーへアクセス可能です。
ユーザーにとっては、背後で動作するチケットの存在を意識することなく、最初の認証作業だけ行えばよいので利便性が高まります。一方で、チケットが第三者に盗み見られてしまうと、正規ユーザーになりすまされ、不正にサーバーへアクセスされるセキュリティリスクとなりかねません。
対策として、チケットには送信時刻情報が含まれており、クライアントとサーバー間の時刻に一定以上のずれがある場合には認証を拒否する仕組みが導入されています。チケットの盗用による悪用を防止し、ネットワークのセキュリティ強化を図っています。
ケルベロス認証とシングルサインオンの関係
シングルサインオンは1度の認証で複数のサービスにアクセスできる仕組みですが、そのシングルサインオン機能を実現するための一つの認証技術として、ケルベロス認証は が位置づけられています。
他のシングルサインオン方式との違いはチケットという特殊な認証情報の有無にあります。ケルベロス認証では、このチケットが認証システムの中核です。チケットには単なる有効期限だけでなく、クライアントの固有ID、タイムスタンプなど複数の認証情報が暗号化して格納されています。
IDとパスワードを直接やり取りすることがないため、認証情報がネットワーク上を流れることがありません。
ケルベロス認証を取り入れるメリット

ケルベロス認証を取り入れるメリットとして、次の3つの内容が挙げられます。
- 暗号化により安全性が高い
- ユーザーの利便性が高い
- 通信トラフィックが少ない
それぞれのメリットの詳細をみていきましょう。
- 暗号化により安全性が高い
ケルベロス認証を取り入れるメリットは、暗号化技術による優れた安全性にあります。ケルベロス認証では、1度認証が完了すると、発行されるチケットには重要な認証情報が強固に暗号化されて格納されます。
暗号化されたチケットは第三者が内容を読み取れないよう設計されているため、正規のユーザー以外はサーバーにアクセスできません。そのため、なりすましや認証情報の窃取など一般的な攻撃手法による不正アクセスを防げます。
企業ネットワークなど、多数のユーザーが複数のサービスやリソースにアクセスする環境では、この安全性の高さが重要なメリットです。
- ユーザーの利便性が高い
2つ目のメリットは、一度認証を済ませると、その後は複数のシステムやサービスに対してIDやパスワードを再入力する必要がないことです。
ユーザーにとっては、最初の認証だけで完了し、以降はシームレスにさまざまなシステムにアクセスできるため、作業効率が大幅に向上します。企業環境では、社内ポータルやメールシステム、ファイル共有、業務アプリケーションなど、多岐にわたるシステムを頻繁に行き来する必要があるため、この利便性が特に活かされます。
- 通信トラフィックが少ない
3つ目のメリットとして、通信トラフィックの削減があります。ケルベロス認証方式では、KDC(Key Distribution Center)と呼ばれる認証サーバーがユーザー認証情報とアクセス権限を包括的に制御しています。
KDCは認証の際にチケットを発行することが役割です。以降は発行済みチケットを活用した認証方式により、KDCとの通信を最小限に抑えた効率的な運用が可能です。最適化された認証プロセスによって、ネットワーク上のデータ転送量が減少し、特に大規模ネットワーク環境で通信面での性能改善が期待できます。認証手続きの迅速化とネットワーク負荷の低減のメリットを同時に享受できます。
ケルベロス認証の課題
ケルベロス認証で注意すべき点の1つに、時刻同期の要件が厳格な点があげられます。ケルベロス認証システムでは、ホストコンピューターの日付と時刻が事前に定義された許容範囲内で同期されていなければなりません。
同期が取れていないと、チケットの時刻情報が無効と判断され、認証が失敗します。チケットに厳密な有効期限が設定されていることで、時刻のずれがセキュリティ機能として働く一方で、運用上の難しさの要因の1つにもなります。。
さらに、クラスタや仮想ホスティング環境のような異なるホスト名を必要とするケースでは、それぞれ独自のケルベロスキーセットが必要になります。このような複雑な管理が原因で問題を引き起こす可能性があることも課題の1つです。
シングルサインオンを実現するケルベロス認証以外の認証方法

シングルサインオンを実現するケルベロス認証以外の認証方法として、次の認証方法を紹介します。
- ICカード認証方式
- フェデレーション方式
- SAML認証方式
- リバースプロキシ方式
- 代理認証方式
それぞれの認証方法をみていきましょう。
- ICカード認証方式
ICカード認証方式は、内部に集積回路を搭載したカードを用いて個人認証を行うセキュリティシステムです。カード内のICチップに暗号化された個人情報や認証鍵が格納されており、専用の読み取り機にかざすことで本人確認が行われます。
企業のオフィスセキュリティや社内システムへのログイン、公共サービスの利用者識別、銀行カードでの本人確認、医療情報の管理、交通機関の乗車券など、高いセキュリティが求められる多様な分野で広く活用されています。
- フェデレーション方式(SAML認証)
フェデレーション方式は、異なるシステムやサービス間で認証情報を安全に共有する仕組みです。ユーザーが1つのシステムで認証を完了すると、連携している他のシステムでは改めて認証画面が表示されず、シームレスにアクセスできます。
フェデレーション方式は主にSAML(Security Assertion Markup Language)やOpenID Connectなどの標準化されたプロトコルを使用してシングルサインオンを実現しています。
SAML認証は、Webサービス間でユーザーの認証情報の交換を実現するためのXMLベースの標準プロトコルです。サービスプロバイダとIDプロバイダの間で、暗号化された認証情報をやり取りする仕組みを提供します。
異なるドメインやプラットフォーム間でも、ユーザー認証情報を安全に共有できるため、ユーザーは複数のWebシステムに個別ログインする手間から解放されます。
- リバースプロキシ方式
リバースプロキシ方式は、外部インターネットからの通信をサーバーに代わって受け付け、適切な内部サーバーへ転送する中継システムです。
クライアントからは内部サーバー構成が見えず、直接サーバーとやり取りしているように見えるため、内部ネットワークの保護に効果的です。
- 代理認証方式
代理認証方式は、ユーザーの認証情報を管理する専用サーバーが、各システムのログインページに対してユーザーに代わって認証処理を行う仕組みです。
代理認証方式をIDaaS(Identity as a Service)と組み合わせることで、クラウドベースの認証基盤を活用し、多様なSaaSアプリケーションへのシングルサインオンを実現できます。
IDaaSは複数のクラウドサービスへのアクセスを一元化し、多要素認証や詳細なアクセス権限管理機能を標準で提供するため、ユーザーの利便性を高めつつ、セキュリティレベルも向上させられます。IDaaSは、クラウドサービスが増加する現代のIT環境で欠かせない認証方式です。
まとめ
本記事では、ケルベロス(Kerberos)認証を解説しました。ケルベロス認証は、安全なネットワーク環境を実現するための認証プロトコルです。サーバーとクライアントの間で相互認証を行い、通信内容を暗号化することで情報漏えいを防ぎます。
ケルベロス認証では、ユーザーが最初に認証を行うと特殊な暗号化チケットが発行され、以降はIDやパスワードを再入力することなく各種サーバーへアクセス可能です。ケルベロス認証を取り入れるメリットや課題を紹介しているため、導入を検討している方は参考にしてみてください。
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